2019年4月27、28、29日の三日間、神奈川県寒川市・さむかわ中央公園とシンコースポーツ寒川アリーナの2会場において、ストリートスポーツの世界大会である「ARK LEAGUE2019」が行われた。同大会ではBMXフラットランド世界一を決める「FLAT ARK」、スケートボード世界一を決める「SKATE ARK」、ブレイクダンスの世界一を決める「BREAK ARK」の3大会が開催。世界のトップライダー・ダンサーが集結し、優勝の座を争って激しい戦いが繰り広げられた。

「SKATE ARK」オープンクラス/マティアス・デル・オリオ photo by tabasa

「FLAT ARK」では過去3度の優勝回数を誇る内野洋平が昨年の雪辱を晴らし王者に返り咲き、「SKATE ARK」では新世代白井空良が優勝、オリンピックへ向けてその可能性を開花させた。今回初開催となった「BREAK ARK」ではオーガナイザーであり、平成のブレイキンシーンを引っ張ってきたBBOY TAISUKEが初代王者に輝いた。3者3様のドラマを見せた平成最後の「ARK LEAGUE」。オリンピック、そして新たな時代へ向けてそれぞれの競技や選手の今後の成長の可能性を感じさせられた2日間となった。

「BREAK ARK」オープンクラス/BBOY Shigekix photo by tabasa

「FLAT ARK」では内野が昨年の雪辱を晴らし王者へ返り咲き

BMXフラットランド「FLAT ARK」ではジーン=ウィリアム・プレヴォスト(カナダ)、ヴィッキー・ゴメス(スペイン)、マシアス・ダンドイス(フランス)、内野洋平ら世界的なBMXライダーが登場。
決勝トーナメントでは、それぞれ実力派のライダー達8名が個性的なトリックでしのぎを削る中、新潟から出場、14歳の片桐悠が抜群の安定感で頭角を現した。片桐悠は兄の亮とともに決勝トーナメントに出場。亮は惜しくも1回戦で北山努に敗れるが、悠はドミニク・ネコルニ(チェコ)に見事勝利し、2回戦へと駒を進めた。悠は2回戦、ゴメスに敗れるがヴァラエティ点を獲得するなどしなやかなトリックで善戦し、新世代の台頭を予感させる大会の展開となった。
ベテラン勢では森崎弘也が高難易度のトリックに果敢に挑戦する姿を見せ、また内野もニュートリックを中心としたルーティーンを構築し、順当に勝ち進んだ。森崎はベスト4でプレヴォストに敗れるも、3位決定戦でゴメスに勝利、3位入賞となる。決勝戦では前年王者のプレヴォストと、過去3大会優勝しており大会のオーガナイザーでもある内野が対戦。プレヴォストは圧倒的スキルと安定感で内野に攻勢を仕掛けたが、内野も新しいトリックで応戦、まだ見ぬトリックが決まるたびにMC、観客の驚きの歓声が会場にあがった。ジャッジの判定は内野の勝利、昨年の雪辱を晴らし内野が優勝に返り咲く結果となった。内野は「FLAT ARK」では4度目の優勝。世界大会では記念すべき10回目の優勝となる。

「FLAT ARK」オープンクラス/内野洋平 photo by tabasa

「FLAT ARK」結果

オープンクラス結果

「FLAT ARK」オープンクラス/左からジーン=ウィリアム・プレヴォスト(準優勝)、内野洋平(優勝)、森崎弘也(3位)

優勝:内野洋平
準優勝:ジーン=ウィリアム・プレヴォスト
3位:森崎弘也

「FLAT ARK」優勝者コメント

オープンクラス優勝:内野洋平

「FLAT ARK」恒例の入賞者による鏡割 photo by tabasa

みなさんありがとうございます。2016年は優勝できたのですが、2017年はジーン=ウィリアムズ・プレヴォストが優勝して、正直悔しくて取り返したい気持ちがありました。今回はニュートリックで固めてきていたので、決まれば勝てるという自信はあったのですが、まさか本当に優勝できるとは。ラストの20秒は自分でもしびれました。寒川町の方々や実行委員会と一緒になり、時間をかけてここまで大きな大会を開催することができました。本当にありがとうございました。

「SKATE ARK」では新時代の選手たちが活躍

「SKATE ARK」ではフェリペ・グスタヴォ(ブラジル)、マキシム・クルグロフ(ロシア)、マニー・サンティアゴ(プエルトリコ)ら錚々たる面子が出場。日本からも「FISEHIROSHIMA2019」での優勝が記憶に新しい佐川涼や2019年4月に行われた「DAMN AM JAPAN」優勝の白井空良、2018年「第2回日本選手権」ストリート優勝の池慧野巨や2019年「日本オープン・ストリート選手権」優勝の池田大亮、オーガナイザーである瀬尻凌といった強豪が出場した。
決勝には、アップ中に起きた怪我の悪化により出場を辞退した池田を除いた8名が出場。前半を終えた時点で佐川、根附海龍(ねつけ・かいり)、グスタヴォが70ポイント超えの得点をマークし、非常にハイレベルな接戦となった。後半、残るは予選トップの青木勇貴斗、白井、マティアス・デル・オリオ(アルゼンチン)の3名のヒート。3名とも高難易度のトリックを連発し、2本のランを終えた時点では誰が優勝するのか全く予想ができない状態となった。ジャムセッション、ベストトリックを3名ともしっかりとこなし、勝負の行方は順位の発表で判明する形となる。会場にコールされたのは優勝者白井の名前。白井は普段通りの明るい笑顔で喜びを発散させ壇上へ登った。「SKATE ARK」 の2代目チャンピオンは白井空良。「DAMN AM JAPAN」での優勝に続き、今後の大会へ向けて好調を示す結果となった。

「SKATE ARK」オープンクラス/白井空良 photo by tabasa

「SKATE ARK」結果

オープンクラス結果

「SKATE ARK」オープンクラス/左から青木勇貴斗(2位)、白井空良(優勝)、マティアス・デル・オリオ(3位) photo by tabasa

優勝:白井空良
準優勝:青木勇貴斗
3位:マティアス・デル・オリオ(アルゼンチン)

「SKATE ARK」優勝者コメント

オープンクラス優勝:白井空良

「SKATE ARK」 オープンクラス/白井空良 photo by tabasa

優勝できて素直に嬉しいです。広島では自分の滑りはできたと思うんですが、惜しい結果に終わってしまったので今回は勝ちたいという思いがありました。短い期間でしたが集中して練習時間をとって頑張りました。ジャムセッションの際に自分しか成功していないトリックがあったので、ミスはあったがそこが良かったと思います。賞金を使って免許を取って車を買いたいです。SLSではしっかり自分の滑りができる様に頑張ります。

「BREAK ARK」初代王者にその名を刻んだのは功労者BBOY TAISUKE

「BREAK ARK」 ではBBOY UZEEROCK(ウクライナ)、BBOY PHIL WIZARD(カナダ)、オーガナイザーであり「Red Bull BC ONE 2008」で2度の準優勝を成し遂げているBBOY TAISUKE(日本)、BBOY Kid Colombia(オランダ)、「BATTLE BAD LEGEND」で過去2連覇のBBOY Shigekix(日本)、BBOY Octopus(韓国)、「BATTLE OF THE YEAR」で日本人初の3連覇の記録を持つBBOY STEEZ(日本)やBBOY YU-KI(日本)らが出場した。
クルーバトルでは、招待選手によるドリームチーム・TEAM BREAK ARKや、BGIRL AMI、BBOY GEN ROCを擁するGood Foot、BGIRL RAMのSUPER BAD、FOUND NATIONなど12チームが出場。ハイレベルな戦いが行われ、TEAM BREAK ARKが優勝を飾った。

「BREAK ARK」クルーバトル/TEAM BREAK ARK/BBOY TAISUKE photo by shuji izumo

最終日、日も傾きかけてきた頃、大トリを飾ったのは初開催の「BREAK ARK」オープンクラス決勝だ。予選を勝ち抜いた選手と、世界の強豪である招待選手がライトアップされた特設ステージの上で優勝をかけて火花を散らし熱戦を演じた。BBOY YU-KIがダイナミックかつ臨機応変なムーブで順当に勝ち進み、JINJO CREWのBBOY Octopusを撃破し勝ち進んだBBOY Shigekixと対戦。一進一退の攻防が続くがBBOY Shigekixが勝利、決勝へ進む。もう一方のブロックではオーガナイザーでもあるBBOY TAISUKEが圧倒的な実力で決勝へと駒を進めた。決勝はBBOY Shigekix とBBOY TAISUKEの一騎打ち。平成という時代のブレイキンシーンを牽引してきた男と、令和のブレイキンシーンを背負って立つことが期待されている二人の男の対決だ。先攻を取ったのはBBOY TAISUKE。いきなりデフエアーを繰り出し会場を沸かせ会場を味方につけたBBOY TAISUKEは、その後も巧みで多彩なムーブの構築で攻勢に出るが、BBOY Shigekixもそれに食い下がるように臨機応変なムーブで応じる。一進一退の攻防。判定はしかしBBOY TAISUKEに軍配が上がった。初代「BREAK ARK」王者はBBOY TAISUKE。平成最後の頂上決戦に見事その名を刻みつけた。

「BREAK ARK」BBOY TAISUKE photo by tabasa

「BREAK ARK」結果

クルーバトル結果

「BREAK ARK」チームバトル/TEAM BREAK ARK photo by shuji izumo

優勝:TEAM BREAK ARK
準優勝:Good Foot
ベスト4:SUPER BAD
ベスト4:Knock for six

オープンクラス結果

「BREAK ARK」BBOY TAISUKE(優勝・写真左)、BBOY Shigekix(2位・写真右) photo by tabasa

優勝:BBOY TAISUKE
準優勝:BBOY Shigekix
ベスト4:BBOY YU-KI
ベスト4:BBOY PHIL WIZARD

「SKATE ARK」優勝者コメント

クルーバトル優勝:TEAM BREAK ARK

優勝したTEAM BREAK ARKのBBOY Shigekix(写真左)とBBOY TAISUKE(写真右)

BBOY TAISUKE
今日はありがとうございました。楽しんだ、というのが率直な感想です。賞金はみんなで分けると思います。エントリー費は自分が出したのでそこの分は返してねとみんなに言います(笑) 明日も頑張ります。

Bboy Shigekix
今日一緒に出演させていただいたメンバーはほとんどの方が初めて一緒に出演するメンバーだったので、思い出になって楽しかったです。明日は敵になってしまう、バトルではライバルだけど一緒に出てもいい雰囲気で楽しめたりできる、BBOYやブレイキン特有のカルチャーがこのイベントに出ていてとても良かったと思います。自分の今日の演技は本当に楽しくできました。今日はありがとうございました。

オープンクラス優勝:BBOY TAISUKE

「BREAK ARK」BBOY TAISUKE photo by tabasa

優勝できて、嬉しいよりも先に、ホッとしました。初代チャンピオンはオーガナイズ人が優勝しているので、どうやってでも優勝したいという気持ちがありました。オーガナイズしながら優勝するのは大変ですが、最後はみんなの力をもらって動けたことが優勝につながったと思います。ストレートで優勝できなかったことは悔しいですが、これが今の実力なので、今後とも練習を積み重ねていきたいと思います。初開催で至らないところや足りていないところもあったと思うのですが、いろんな人に助けてもらって今日無事に終わることができました。これから反省や改善をしていって、来年からもこの大会を続けたいと思います。

寒川町長コメント

「SKATE ARK」表彰式での白井空良とのツーショット/木村俊雄・寒川町長 photo by tabasa

「ARK LEAGUE」は町民にとっても初めての体験であったと思います。寒川でストリートスポーツの世界大会を開催できたことに大きな驚きと誇りを感じています。町民の方々にとっても寒川の新しい存在価値や誇りが芽生えたのではないでしょうか。今後この大会を端緒として、持続してストリートスポーツとの関わりを作り、ストリートスポーツ発祥の町になる様なまちづくりができればと思います。新しい時代、世界への期待を込めて、今日のこの大会の関係者の皆様、来場者の皆様に、お礼を申し上げます。ありがとうございました。

「ARK LEAGUE」とは

「ARK LEAGUE」とは、2013年から4年間にわたり神戸出身のBMXライダー内野洋平がオーガナイズし、兵庫県神戸市で開催された「ライダーによるライダーのための」BMX世界王者決定戦「FLAT ARK」を前身とする、ストリートスポーツの世界大会。
初開催の2017年からは「FLAT ARK」に加え、日本の若手トップスケーターである瀬尻凌をオーガナイザーに迎えたスケートボードの世界大会である「SKATE ARK」も開催し、名称も新たに「ARK LEAGUE」としてスタートした。
開催3年目となる「ARK LEAGUE2019」では、日本のブレイクダンスシーンを牽引するTAISUKEをオーガナイザーとして「BREAK ARK」が初開催。会場も神奈川県寒川市に移し、BMX・スケート・ブレイキンの三つ巴で日本のストリートスポーツシーンを牽引する。

「ARK LEAGUE 2019」 開催概要

日程: 2019年4月27日(土曜日)、28日(日曜日)、29日(月曜日・祝)
場所: 神奈川県寒川町 さむかわ中央公園&シンコースポーツ寒川アリーナ
住所: 〒253-0106 神奈川県高座郡寒川町宮山275
内容:FLAT ARK(FA) BMX フラットランド世界選手権 SKATE ARK(SA)スケートボード世界大会 BREAK ARK(BA)ブレイクダンス世界大会
主催・企画・運営:ARK LEAGUE 実行委員会(実行委員長 加藤亮、副実行委員長 宮迫嘉徳)
大会オーガナイザー:内野洋平(FLAT ARK)、瀬尻稜(SKATE ARK)、TAISUKE(BREAK ARK)
SPECIAL PARTNER:寒川町
後援:神奈川県

文・金子修平

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